研究開発費等に係る会計基準(意見書)

 研究開発は、企業の将来の収益性を左右する重要な要素であるが、近年、商品サイクルの短期化、新規技術に対するキャッチアップ期間の短縮及び研究開発の広範化・高度化等により、研究開発のための支出も相当の規模となっており、企業活動における研究開発の重要性が一層増大している。そのため、研究開発費の総額や研究開発の内容等の情報は、企業の経営方針や将来の収益予測に関する重要な投資情報として位置づけられている。

 研究開発費に類似する概念として、我が国には試験研究費及び開発費がある。しかし、試験研究費及び開発費は、その範囲が必ずしも明確ではなく、また、資産への計上が任意となっていること等から、内外企業間の比較可能性が阻害されているとの指摘がなされている。

 このような状況を踏まえ、企業の研究開発に関する適切な情報提供、企業間の比較可能性及び国際的調和の観点から、研究開発費に係る会計基準を整備することが必要である。

 また、コンピュータの発達による高度情報化社会の進展の中で、企業活動におけるソフトウェアの果たす役割が急速に重要性を増し、その制作のために支出する額も次第に多額になってきている。このソフトウェアの制作過程には研究開発に当たる活動が含まれているが、ソフトウェアについての明確な会計基準が存在せず、各企業において区々の会計処理が行われており、会計基準の整備が望まれている。

 このため、本基準では、ソフトウェア制作過程における研究開発の範囲を明らかにするとともに、ソフトウェア制作費に係る会計処理全体の整合性の観点から、研究開発費に該当しないソフトウェア制作費に係る会計処理についても明らかにすることとした。

 

 重要な投資情報である研究開発費について、企業間の比較可能性を担保することが必要であり、費用処理又は資産計上を任意とする現行の会計処理は適当でない。

 研究開発費は、発生時には将来の収益を獲得できるか否か不明であり、また、研究開発計画が進行し、将来の収益の獲得期待が高まったとしても、依然としてその獲得が確実であるとはいえない。そのため、研究開発費を資産として貸借対照表に計上することは適当でないと判断した。

 また、仮に、一定の要件を満たすものについて資産計上を強制する処理を採用する場合には、資産計上の要件を定める必要がある。しかし、実務上客観的に判断可能な要件を規定することは困難であり、抽象的な要件のもとで資産計上を求めることとした場合、企業間の比較可能性が損なわれるおそれがあると考えられる。

 したがって、研究開発費は発生時に費用として処理することとした。

 

 ソフトウェアの制作費について

 ソフトウェアの制作費は、その制作目的により、将来の収益との対応関係が異なること等から、ソフトウェア制作費に係る会計基準は、取得形態(自社製作、外部購入)別ではなく、制作目的別に設定することとした。

 研究開発目的のソフトウェアの制作費は研究開発費として処理されることとなるが、研究開発目的以外のソフトウェアの制作費についても、制作に要した費用のうち研究開発に該当する部分は研究開発費として処理する。

 研究開発費に該当しないソフトウェア制作費の会計基準を制作目的別に定めるにあたっては、販売目的のソフトウェアと自社利用のソフトウェアとに区分し、販売目的のソフトウェアをさらに受注制作のソフトウェアと市場販売目的のソフトウェアに区分することとした。

 新しい知識を具体化するまでの過程が研究開発である。したがって、ソフトウェアの制作過程においては、製品番号を付すこと等により販売の意思が明らかにされた製品マスター、すなわち「最初に製品化された製品マスター」が完成するまでの制作活動が研究開発と考えられる。

 製品マスター又は購入したソフトウェアの機能の改良・強化を行う制作活動のための費用は、著しい改良と認められない限り、資産に計上しなければならない。

 なお、バグ取り等、機能維持に要した費用は、機能の改良・強化を行う制作活動には該当せず、発生時に費用として処理することとなる。

 製品マスターは、それ自体が販売の対象物ではなく、機械装置等と同様にこれを利用(複写)して製品を作成すること、製品マスターは法的権利(著作権)を有していること及び適正な原価計算により取得原価を明確化できることから、当該取得原価を無形固定資産として計上することとした。

 

研究開発費等に係る会計基準

 研究及び開発

 研究とは、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探求をいう。開発とは、新しい製品・サービス・生産方法(以下、「製品等」という。)についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化することをいう。

 ソフトウェア

 ソフトウェアとは、コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム等をいう。

 研究開発費は、すべて発生時に費用として処理しなければならない。

 なお、ソフトウェア制作費のうち、研究開発に該当する部分も研究開発費として費用として費用処理する。

 

 受注制作のソフトウェアに係る会計処理

 受注制作のソフトウェアの制作費は、請負工事の会計処理に準じて処理する。

 市場販売目的のソフトウェアに係る会計処理

 市場販売目的のソフトウェアである製品マスターの制作費は、研究開発費に該当する部分を除き、資産として計上しなければならない。ただし、製品マスターの機能維持に要した費用は、資産として計上してはならない。

 自社利用のソフトウェアに係る会計処理

 ソフトウェアを用いて外部へ業務処理等のサービスを提供する契約等が締結されている場合のように、その提供により将来の収益獲得が確実であると認められる場合には、適正な原価を集計した上、当該ソフトウェアの制作費を資産として計上しなければならない。

 社内利用のソフトウェアについては、完成品を購入した場合のように、その利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合には、当該ソフトウェアの取得に要した費用を資産として計上しなければならない。

 機械装置等に組み込まれているソフトウェアについては、当該機械装置等に含めて処理する。

 

 ソフトウェアの減価償却方法

 無形固定資産として計上したソフトウェアの取得原価は、当該ソフトウェアの性格に応じて、見込販売数量に基づく償却方法その他合理的な方法により償却しなければならない。

 ただし、毎期の償却額は、残存有効期間に基づく均等配分額を下回ってはならない。

 

 一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費の総額は、財務諸表に注記しなければならない。

 

 特定の研究開発目的にのみ使用され、他の目的に使用できない機械装置や特許権等を取得した場合の原価は、取得時の研究開発費とする。

 

 市場販売目的のソフトウェアについては、最初に製品化された製品マスターの完成までの費用及び製品マスター又は購入したソフトウェアに対する著しい改良に要した費用が研究開発費に該当する。

 

研究開発費等に係る会計基準(実務指針)

研究・開発の典型例

a.従来にはない製品、サービスに関する発想を導き出すための調査・探求

b.新しい知識の調査・探求の結果を受け、製品化又は業務化等を行うための活動

c.従来の製品に比較して著しい違いを作り出す製造方法の具体化

d.従来と異なる原材料の使用方法又は製品の製造方法の具体化

e.既存の製品、部品に係る従来と異なる使用方法の具体化

f.工具、治具、金型等について、従来と異なる使用方法の具体化

g.新製品の試作品の設計・製作及び実験

h.商業生産化するために行うパイロットプラントの設計、建設等の計画

i.取得した特許を基にして販売可能な製品を製造するための技術的活動

 

研究・開発に含まれない典型例

a.製品を量産化するための試作

b.品質管理活動や、完成品の製品検査に関する活動

c.仕損品の手直し、再加工など

d.製品の品質改良、製造工程における改善活動

e.既存製品の不具合などの修正に係る設計変更及び仕様変更

f.客先の要望等による設計変更や仕様変更

g.通常の製造工程の維持活動

h.機械設備の移転や製造ラインの変更

i.特許権や実用新案権の出願などの費用

j.外国などからの技術導入により製品を製造することに関する活動

 


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