資産除去債務に関する会計基準

 「資産除去債務」とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。この場合の法律上の義務及びそれに準ずるものには、有形固定資産を除去する義務のほか、有形固定資産の除去そのものは義務でなくとも、有形固定資産を除去する際に当該有形固定資産に使用されている有害物質等を法律等の要求による特別の方法で除去するという義務も含まれる。

 

資産除去債務の負債計上

 資産除去債務は、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって発生した時に負債として計上する。

 

資産除去債務の算定

 資産除去債務はそれが発生したときに、有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積り、割引後の金額(割引価値)で算定する。割引率は、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率とする。

 

資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分

 資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債として計上した時に、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加える。資産計上された資産除去債務に対応する除去費用は、減価償却を通じて、当該有形固定資産の残存耐用年数にわたり、各期に費用配分する。

 

貸借対照表上の表示

 資産除去債務は、貸借対照表日後1 年以内にその履行が見込まれる場合を除き、固定負債の区分に資産除去債務等の適切な科目名で表示する。貸借対照表日後1 年以内に資産除去債務の履行が見込まれる場合には、流動負債の区分に表示する。

 

経緯

 これまで我が国においては、例えば、電力業界で原子力発電施設の解体費用につき発電実績に応じて解体引当金を計上しているような特定の事例は見られるものの、国際的な会計基準で見られるような、資産除去債務を負債として計上するとともに、これに対応する除去費用を有形固定資産に計上する会計処理は行われていなかった。企業会計基準委員会は、有形固定資産のこのような除去に関する将来の負担を財務諸表に反映させることは投資情報として役立つという指摘などから、資産除去債務の会計処理を検討プロジェクトとして取り上げることとした。

 

 有形固定資産の使用期間中に実施する環境修復や修繕も、資産の使用開始前から予想されている将来の支出であり、資産除去債務と同様に扱わないことは整合性に欠けるのではないかとの見方がある。しかし、修繕引当金は、収益との対応を図るために当期の負担に属する金額を計上するための貸方項目であり、債務ではない引当金と整理されている場合が多いことや、操業停止や対象設備の廃棄をした場合には不要となるという点で資産除去債務と異なる面があることから、本会計基準では取り扱わないものとした。

 

 引当金処理の場合には、有形固定資産の除去に必要な金額が貸借対照表に計上されないことから、資産除去債務の負債計上が不十分であるという意見がある。また、資産負債の両建処理は、有形固定資産の取得等に付随して不可避的に生じる除去サービスの債務を負債として計上するとともに、対応する除去費用をその取得原価に含めることで、当該有形固定資産への投資について回収すべき額を引き上げることを意味する。

 

資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分

(資産除去債務に対応する除去費用の資産計上)

 資産除去債務を負債として計上する際、当該除去債務に対応する除去費用をどのように会計処理するかという論点がある。本会計基準では、債務として負担している金額を負債計上し、同額を有形固定資産の取得原価に反映させる処理を行うこととした。このような会計処理(資産負債の両建処理)は、有形固定資産の取得に付随して生じる除去費用の未払の債務を負債として計上すると同時に、対応する除去費用を当該有形固定資産の取得原価に含めることにより、当該資産への投資について回収すべき額を引き上げることを意味する。すなわち、有形固定資産の除去時に不可避的に生じる支出額を付随費用と同様に取得原価に加えた上で費用配分を行い、さらに、資産効率の観点からも有用と考えられる情報を提供するものである。

 

 なお、資産除去債務に対応する除去費用を、当該資産除去債務の負債計上額と同額の資産として計上する方法として、当該除去費用の資産計上額が有形固定資産の稼動等にとって必要な除去サービスの享受等に関する何らかの権利に相当するという考え方や、将来提供される除去サービスの前払い(長期前払費用)としての性格を有するという考え方から、資産除去債務に関連する有形固定資産とは区別して把握し、別の資産として計上する方法も考えられた。しかし、当該除去費用は、法律上の権利ではなく財産的価値もないこと、また、独立して収益獲得に貢献するものではないことから、本会計基準では、別の資産として計上する方法は採用していない。当該除去費用は、有形固定資産の稼動にとって不可欠なものであるため、有形固定資産の取得に関する付随費用と同様に処理することとした。

 


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