取得原価主義会計

  この会計システムを考察するにあたっては、株主から託された財についての経営者における保全責任と運用責任、つまり受託責任の存在について理解することが必要である。株主から委託された企業資本を維持し、企業資本の運用により利益を追求することが経営者の受託責任の本質であり、その履行状況の説明(会計責任)に役立つのが原価主義の原則及び実現主義の原則である。

 

 原価主義の原則によれば実際取引事実に即して資産評価が行われ、さらに、資産が売却されれば取得原価と売却収益とが対応されて処分可能利益が算定される。この利益の特徴は、税金や配当金などによって貨幣が社外に流出したとしても、株主から委託された経済財たる企業資本は侵食されず維持できているといった点である。会計に求められているのは計算の確実性や検証性であり、その点においても資産評価の基礎を取得原価に求めることは健全であるといえる。 

 

 「取得原価主義会計とは、実際取引事実にもとづき会計事実を認識・測定するものである。期間損益計算においては、実現主義の原則による収益認識と、過去の現金支出たる取得原価を各会計期間に配分することにより、処分可能利益の計算を行うものである。資産評価においては、過去の現金支出たる取得原価を基礎として配分手続きを行い、原価配分後の残余部分が各会計期間末における貸借対照表価額となる。」

 

 

 問題点(限界)としては、資産評価の観点から、期末時価と原価が乖離してしまい、資産の適正評価・企業の実態開示の点で問題がある。また、価格上昇時においては、保有利得が期間損益計算に算入されてしまい、名目資本維持しか図れず、実体資本維持や実質資本維持の点で問題があるといえる。

 

 これに対して時価主義とは、資産を中心に公正価値をもって評価する考え方であり、企業の実態開示能力の点で、取得原価主義より優れている。また、資産の価値変動による損益の認識が可能ともなる。時価主義である取替原価主義であるなら、再調達原価をもって資産評価するため、資産の再調達に必要な資金を営業活動から回収することができ、企業の継続に貢献する利点がある(実体資本維持)。しかし、企業の保有する全ての資産を時価評価することは、実務実行性に欠けるといった問題が指摘される。

 

 

他の会計システムとの比較(参考)

取得原価主義会計

維持すべき資本 → 名目資本維持 = 企業に投下された貨幣の名目額

長所 → 検証可能性が高い・説明責任履行に役立つ・保守主義性

短所 → B/Sによる企業の実態が現実と乖離・価格上昇時に保有利益が期間損益に算入

 

一般物価変動会計

維持すべき資本 → 実質資本維持 = 企業に投下された貨幣のもつ購買力

長所      → 貨幣資本の購買力の維持に関する情報を提供(実質的な受託責任を履行)

短所      → 一般物価変動を考慮した数値が情報利用者に誤解を与える可能性がある

 

個別価格変動会計

維持すべき資本 → 実体資本維持 = 企業に投下された物的資産(物財そのものの維持)

長所 → 保有利得と操業利益(業績利益)が明確に区別・取替え資金が蓄積

短所 → 中古資産について取替原価を客観的に求めがたい

 

 


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